私たちはこの人生の中で色々な人の指導を受けながら、成長していきます。

親、教師、上司、あるいは兄弟、姉妹、親戚、近所の人、友人。

色々な人が私たちを指導しています。

指導というと堅苦しいイメージですが、要は「与える影響」と言い換えることができます。

私たち自身も色々な人に影響を与えています。

私たち人から受ける影響というのは、人生において極めて大きなものがあります。

今の私たちの人格はその影響から形作られていったと言っても過言ではありません。

同じ遺伝子を持っていたとしても、育つ環境、つまり出会った人、受けた指導や教育によって全く異なる性格を持ち、違う人生を歩む可能性も十分にあります。

少し恐ろしい話ですが、人格形成にとって、私たち自身が主体的に獲得する部分よりも、周囲から受けた影響の方が遥かに大きな部分を占めます。

あなたは今までどんな指導を受けて成長してきましたか?

例え話をします。

同じ才能を持ち、同じ練習量の選手がいるとします。

しかし、同じ才能、同じ練習量であっても、指導の方法によって伸びる選手と伸びない選手が出てきます。

Aさんのコーチは、昔ながらの熱血系で、かなり荒っぽい指導をします。そして、ミスに厳しい人です。

練習中、コーチはAさんに対して「なんでそんなことが出来ないんだ!」「何回教えたら飲み込むんだ!」「ミスをするな」「もっと~しろ」と指導します。

Aさんはコーチの指導をよく聞き、熱心に練習しますが、なかなか力が伸びません。

このタイプの指導を受けると、選手は「コーチに怒られないように。怒られたくない」という思いを持ってしまって、かえって委縮してしまいます。

委縮状態にある選手は、練習によって自らを高めようという意識がもてません。

むしろ、「ミスをしたくない。怒られたくない」という一心で練習を過ごしてしまいます。

また、心理的に委縮してしまうと、コーチの指導に従うばかりで、選手が本来持っている自主性や自由な発想が失われてしまいます。

そして、委縮してしまうと「どうしたら勝てるようになるのか、どうしたらもっと強くなれるのか、どうしたらもっと自信が持てるのか」という向上心溢れる発想は失われ、ひたすら「ミスをしちゃだめだ」というネガティブな方向でしか考えられなくなってしまいます。

残念ながら、Aさんはこのコーチの指導を受ける限り、持っている才能を開花させて、伸びていくことは難しいでしょう。

Aさんのコーチの問題点はどこにあるでしょうか?

それは、単に厳しいことが原因ではありません。

問題は、Aさんに対してプラスのストローク(=肯定的なメッセージ)を一切送っていないということです。コーチは常にAさんに対してマイナスのストローク(=否定的なメッセージ)を与え続けています。

マイナスのストロークを受け続けてきた人は、ネガティブな思いを抱えたまま成長するしかありません。

つまり、自分は「できない」という自己否定感にずっと支配されているのです。その人は、自分の無力さが原因だと思うかもしれませんが、それは間違っています。否定的なものしか与えてもらっていないから、自分の否定的なことしか知らないのです。自分の良いものを知らないだけです。

ではBさんの話に移ります。Bさんのコーチは厳しい練習を課しますが、常に配慮も欠かさない人です。

コーチはBさんに「そのプレーいいね!でもこうしたらもっと上手くいくよ!」「焦りすぎたね、でもそのアグレッシブさはいいよ」と指導します。

Bさんのコーチの優れている部分は、Bさんに対してプラスのストロークを与えている点です。

厳しい指導の中にもそれをフォローする言葉を入れることで、Bさんは指導を肯定的に受け止めることができます。Bさんは委縮することはありません。むしろ、「どうしたら勝てるのか、どうしたら強くなれるのか」という向上心を抱き、練習に打ち込むことができるようになります。

Bさんは練習をし、コーチから指導をうける度に自信を深め、自主性と自由な発想力を得ていきます。

プラスのストロークを受けることで、人は自己肯定感を獲得し、自分の持っている才能や可能性に気付くことができます。それは自信となり、自分の可能性を信じて、様々な課題に挑戦していく原動力となっていきます。

良いことを与えてくれたからこそ、自分のストレングス(強み)や可能性を知ることが出来たのです。

「できる」という自己肯定感を獲得して成長してきた人は、例え困難な出来事に直面し、失敗したとしても、その中から肯定的な意味を見つけ出していくことができます。

例え話はスポーツの選手とコーチの指導のことを引き合いに出しましたが、これは現実のあらゆる場面に当てはまります。

あなたは親や教師や周囲の人からどんな言葉を掛けられて成長してきましたか?

また、部下や友人、家族に対してどんな言葉を掛けていますか?

もし、人にマイナスのストローク(=否定的なメッセージ)を送ってばかりいるならば、相手の良いところを探して、フォローしながら声を掛けてみると良いでしょう。

成長過程においてマイナスのストロークばかり受けてきた人は、ネガティブ思考を持ちやすいです。しかし、それが一生そのままという訳ではありません。

なぜなら、人間は一生成長するからです。一生が成長過程と言えるでしょう。

人から受ける影響は非常に大きいです。しかし、自ら自分に対してプラスのストロークを与えることで、変わっていくことは可能です。

他者がプラスのストロークをくれないなら、自分を褒めてください。

まずは、気付くことが大切です。

自分の過去を振り返り、自分がどのようなストロークを受けてきたのかを気付くことが大切です。

そして、気付きは癒しの一歩です。

そこから、自分を変えていく可能性が生まれてきます。

人から受ける影響、人に与える影響の大切さのお話でした。