6.現代サンタクロースの登場
前回、サンタクロースの原型が聖ニコラウスであるというお話をしました。
私たちは、サンタさんと言えば白髪で、ふっくらとした体形で、赤い帽子と衣装を身にまとった、笑顔の優しい、陽気で朗らかなおじいさんというイメージがあります。
しかし、このイメージは聖ニコラウスの時代にはないものでした。このイメージは随分後代によって作られたものです。
サンタクロースの原型である聖ニコラウスは司教でしたから、今のサンタクロースの姿とは大分印象が異なります。
聖ニコラウスは祭服を着て、杖を持ち、頭には長い三角帽子を被った、厳格なイメージです。
こんな姿です。
今のサンタクロースと比べると、だいぶ近寄りがたいですね。
では、今のサンタクロース、現代サンタクロースのイメージはいつ頃出来上がったのでしょうか。
現代サンタクロースのイメージは1820年代あたりからアメリカの絵本や詩、本などによって形作られてきました。
実は近代~現代サンタの歴史を調べるのはなかなか奥が深いし、面白いです。ここでは深くは触れられませんが、また機会があったらそこらへんも書きたいなと思います。
ただ、現代のサンタさんのイーメジに大きく影響を与えたのは、一般的には(諸説あるが)1822年にニューヨークのクレメント・クラーク・ムーアが作ったと言われている『聖ニコラウスの訪問』という詩とコカ・コーラ社の広告と言われています。
ちなみになぜ諸説あるかというとWikipediaでは以下のような解説をしているからです。
「1823年、米国トロイの新聞「トロイ・センティネル」に「聖ニコラスの訪問記(クリスマスの前の晩)」という詩が神学者クレメント・クラーク・ムーアの友人の手によって、作者名を明らかにしない形で掲載された。これは長らくクレメント・クラーク・ムーア教授 (Clement C. Moore) によるものであると紹介されてきた。一方、2000年のニューヨーク・タイムスの報道により、ヘンリー・リヴィングストン・ジュニアが本当の作者ではないか、という説が提示された。」
コカ・コーラ社の広告は現代サンタクロースのイメージを決定付けたという意味で、大きな功績があります。
コカ・コーラ社は、それまでバラバラだった近代サンタのイメージを白髭で、ふっくらして、笑顔で陽気な、赤と白の衣装を着たおじいさんというものに統一しました。
今、私たちがサンタクロースとして頭に思い浮かべるイメージがコカ・コーラ社の広告によって統一・完成されたと言うことが出来ます。
これが現代サンタの完成です。
そしてもう一つ、サンタさんには大切な相棒がいます。
それがトナカイです。
サンタさんと一緒にプレゼントを運ぶトナカイは8頭います。
それぞ名前があって、ダッシャー (Dasher)、ダンサー (Dancer)、プランサー (Prancer)、ヴィクセン (Vixen)、ダンナ― (Donner)、ブリッツェン (Blitzen)、キューピッド (Cupid)、コメット (Comet)です。
しかし、皆さん疑問に思わないでしょうか?
あの有名な曲「赤鼻のトナカイ」に出てくるルドルフ(Rudolph)がここには出てきません。
上の8頭たちは上記のムーア作と言われている「聖ニコラウスの訪問記」(別題「サンタクロースがきた」)の中に登場するトナカイたちですが、ルドルフはロバート・L・メイ著の「ルドルフ 赤鼻のトナカイ」(1939年)の中で初めて登場してきます。
ですから、ルドルフは有名な8頭の後輩と言えるでしょう。
ルドルフが自分の鼻が赤鼻で悩んでいた時に、サンタさんが赤く光るルドルフの赤鼻に着目して8頭の先導役として先頭を走る1頭に抜擢されるという話は有名ですね。
さて、最後に有名なサンタクロースは本当にいるのか?という有名な質問を紹介したいと思います。
当時8歳の女の子ヴァージニアから地元紙のニューヨーク・サン新聞編集部に「友達からサンタクロースはいないと言われたけど、サンタクロースって本当にいるのですか?教えてください」という旨の投書が届けられました。
そこでサン紙社説担当のフランシス・チャーチがその問いに答えることとなりました。
その答えが秀逸です。
その答えの要約は、「見えなくても存在するものはいっぱいある。サンタクロースも見えないけど、間違いなくいるのだよ」というものでした。
フランシスはサンタさんの存在と、愛・いたわり・思いやりなどの優しい気持ちは同じものであると言いました。
これらの気持ちは目には見えないけれど、でも確かに存在していて、力を与えてくれるし、周りにも影響を与えます。
目に見えるものだけが全てではないということですね。
豆知識の豆知識では、北アメリカ航空宇宙防衛司令部、通称ノーラッド(NORAD)はクリスマスの時期なると、「ノーラッド・トラックス・サンタ」として毎年サンタを追跡するのが恒例になっているそうです。
ノーラッドがサンタを追跡するようになった逸話も面白いので、また機会があれば紹介したいと思います。
また、国際サンタクロース協会というものがあり、そこが公認サンタを認定しているそうです。
サンタは深いですね。
次回のクリスマス豆知識では、クリスマスツリーについてお話しできればと思います。