以下は、松木武彦『全集 日本の歴史 第1巻 列島創世記』のP, 19-30の要約です。

人類の進化を遡ると、今から700万年ほど前までは、ヒトの祖先とチンパンジーやゴリラといった霊長類の祖先は同じ動物でした。ヒトはそこから分岐して進化し、現在の様な知能や姿を獲得していきました。チンパンジーやゴリラも独自の進化を遂げ、今の様な知能や姿を持つに至りました。彼ら霊長類の知能は他の動物と比べると遥かに上回っています。しかし、その彼らも知性においてはヒトには遠く及びません。

私たちホモ・サピエンスが進化の過程で獲得していったのは身体的特徴のみならず、脳の働き方の特徴、即ち心の在り方も独自のものを獲得していきました。脳の働き方=心の特徴もまた、生存の為に有利なものが生き残っていくと考えるのが最近の進化論で唱えられています。つまり、身体の特徴だけでなく、心の特徴もまた進化の産物というわけです。私たちの心は、架空の存在、美の感覚、象徴化を生み出す傾向を持っています。

ホモ・サピエンスの物質文化の最大の特徴といわれるのが、「象徴的器物」と呼ばれる一群です。人間や動物、半人半獣の塑像・洞窟壁画・装身具などの生活の為の実用機能を持たない、見て感じるということのために作られた人工物のことです。特に、半人半獣の塑像は、架空の存在を頭の中に生み出す抽象的な思考やアナロジー(何らかの形状を類似する別物になぞらえること)の能力、即ち認知特性をホモ・サピエンスが進化の過程で獲得していったことを物語っています。

この様なことから、架空の存在やそれらが持つと考えられる超自然的力を信じることと、人々の生得的な欲求や望みとが結びつくところに、神や宗教の源があるに違いない。半人半獣の塑像は、ホモ・サピエンスの認知特性の中に、神や宗教を生み出す素地が織り込まれていたことを示しています。架空の存在は「神」、形や模様への魅惑は「美」、表現は「芸術」の源であると言えるでしょう。

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