人生は山あり谷あり。順調にいくこともあれば、逆境に晒されることもあります。当たり前のことです。
自分のミスや不注意から苦難に会うのならばある程度諦めや覚悟はできると思います。しかし、完全な不条理から到底受け入れられない困難に巻き込まれなければならないことも残念ながらあります。
その様な完全に打ちひしがれた状態から立ち直ることは本当に大変なことです。長い時間もかかるでしょう。多くの場合、自分に苦難をもたらした相手や出来事に対して怒り、憎しみ、復讐に燃えるでしょう。それは当然の感情です。そして、その感情が時に自分を立ち直らせる原動力になる場合もあります。その様な感情を無理に封印する必要もありません。
長い時間をかけて立ち直ったら、私たちはそこから一歩踏み出して歩んでいかなければなりません。新しい一歩を歩みだす時、心の切り替えも必要です。いつまでも怒りや憎しみに囚われているのは望ましくありません。立ち直るまでの回復期にはその様な感情を抱くことも必要です。しかし、新しい人生を歩み始める時、その様な感情はかえって過去を引きずる重しになりかねません。過去から決別し、新しく生きるためにも、ネガティブな感情をいつまでも引きずり続けるのではなく、心の中で割り切り、整理する必要があるでしょう。
新しい一歩を歩みだすには、ネガティブなエネルギーではなく、ポジティブなエネルギーが必要です。ポジティブなエネルギーによってこそ、新しい人生を切り開くことが出来ます。しかし、私たちは聖人ではありません。過去にあった出来事を全て完全に赦すことなどできません。自分を苦しめた出来事を全て赦すということは、過去に屈辱を味わい、苦しんだ自分自身を否定することになります。自分自身に執心しない聖人ならそれも可能でしょうが、私たちの大多数は自分だ自分であることに固執して生きています。なので、過去を完全に赦すことなどできません。許せないものは許せないのです。そして過去を完全に忘れることもできません。もし全ての苦しい思い出を完全に忘れることが出来たならば、それは幸福なことでしょう。しかし、私たちは苦しい思い出も含めて過去が現在の自分自身を作っているのです。過去と自分自身を完全に切り離すこともできません。
では、新しい一歩を踏み出すために、ポジティブなエネルギーを獲得するためにはどう過去と向き合うべきでしょうか。それには過去の苦しみ、苦い思い出を忘れることなく、その過去を乗り越えることを原動力とすることが必要です。過去を払拭するには、成功体験をするしかありません。現在の自分が過去の自分を乗り越えた時のみ、過去の苦難を完全に乗り越えることが出来るのです。それは復讐ではありません。特定の個人や出来事を叩き潰すことではありません。自分自身を超えることによって、過去と決別するのです。それが最も過去に対する正しい向き合い方、心の整理でしょう。
過去に囚われて沈殿していくのではなく、未来に向かって上昇していくことからポジティブなエネルギーは得られます。苦い思い出に心を痛めるのではなく、それを超えようとする思いを前に進むエネルギーに変換し、思い描く未来に向かって突き進むのです。怒りや憎しみを、自分自身を超えることに挑戦するエネルギーに変換して、発散するのです。聖人の様に過去を赦す必要も、過去を忘れる必要もありません。私たちは常人です。辛い過去は辛いものです。しかし、その苦しみや辛さを前に進む爆発力として変えることは出来ます。過去を超えようとする決意は、未来へ向かうモチベーションに繋がります。そうして目標に向かってやり切り、目標を達成する。その成功体験は、過去の自分を超えたという自信になり、ポジティブに過去の出来事を整理し、自分を捉えていた過去と決別することが出来ます。その時、もはや過去は自分を縛ることは無くなり、自由になり、解放された新しい人生の一歩を踏み出すことが出来ます。