人間は長い時代、世界を理解するために神をつくりだすことで、世界を説明しようとしてきた。神という概念は大変便利で、世の中のあらゆる現象も不条理も説明することができた。
しかし、現代において世界を説明するのに神を出す必要はなくなってきた。人間自らが発見した法則によって世界を説明できるようになってきた。未だ人間が説明できないこともあるが、それらを神という概念によって説明することもなくなった。人間によって作り出された神はもはや死んだと言えるだろう。
神という概念はもう一つ、人間の救済という役割を持っていた。それは死や疫病、災害という不条理への対抗策であった。しかし、現代においては不条理と思われていた現象が解明され、それを次第に克服できるようになっている。災害を防ぐ手立てを人間は未だ持ってはいないが、しかし原因不明のという恐怖のベールはもはや取り払われている。自然現象として説明されている。人間はもはや神によって救済される必要もなくなっている。
人間は自分の理解を超えた現象や、世界を神という概念を用いることで巧みに説明してきた。神という概念は殆ど完璧な道具である。しかし、同じ道具がどんな時代でも通用する訳ではない。また、いつまでも同じ道具を使い続けるわけにもいかない。