以下の内容は田川健三『書物として新約聖書』に準拠しています。
旧約聖書という矛盾
キリスト教の新約聖書の正典化の歴史における「旧約聖書という矛盾」はパウロに最も顕著に表れています。
パウロにとってキリスト教の福音は明瞭にユダヤ教の否定的克服でした。しかし、矛盾することに、彼にとって旧約聖書はおそらく他のどのキリスト教徒にとってよりも絶対的な正典的な権威でした。このパウロの在り方が、これから形成されていくキリスト教の抱え込まざるを得なかった最大の矛盾として残るものです。
新約聖書の正典化の歴史とは、この矛盾をどう解消するかという、数百年に渡るキリスト教会の苦闘の結果だったと言えます。もっとも、結局その矛盾は解消しきれずに今日に至っています。 “新約聖書正典化の歴史2”続きを読む